「フォレンジック」は、法科学や科学捜査を表す言葉です。デジタル世界における不正行為や情報漏洩があった際には、証拠保全や解析を行うデジタルフォレンジックの技術が重要な役割を果たします。
本稿では、フォレンジックの概要や手法についてわかりやすく解説したうえで、セキュリティ対策との関係性を整理していきます。
フォレンジックとは
まず、フォレンジックとはどのような考え方を指すのか、その意味や概要について見ていきましょう。サイバー攻撃や情報漏洩の対策を講じるうえで、フォレンジックについて理解を深めることは重要なポイントになります。
科学的方法による証拠の分析
フォレンジック(フォレンジック・サイエンス、フォレンジクス)とは、法科学を指す言葉です。科学的な手法を用いることで証拠となる情報もしくは物的証拠を引き出し、保全する行為や考え方、もしくはその技術のことをいいます。
ちなみにフォレンジックという言葉自体の直訳は、「法廷の」という意味になります。法廷に関わることを指す言葉として使われますが、一般的にフォレンジックというと、前述した法科学自体を指すことが多いです。
科学の発展に伴うフォレンジックの拡大
科学技術は、近年目覚ましい発展を遂げています。フォレンジックの分野も、時代とともに変化や発展を遂げ、拡大しています。
犯罪の立証に備えて証拠を見いだすという行為自体は、古代より行われてきました。法科学といえば代表的なものとして、犯罪科学や法医学、法心理学などといったものがあります。これらは、文明の発達と細分化に伴って法科学として確立されました。
この細分化の流れで現代において注目されているのが、サイバー犯罪などに対応する「デジタルフォレンジック」になります。
デジタルフォレンジックとは
デジタルフォレンジックは、フォレンジックの分野拡大によって生まれた、いわば「デジタル世界におけるフォレンジック」になります。
デジタルフォレンジックでは、サイバー攻撃を受けたり、情報漏洩などの事故・事件が生じた際に、コンピュータやネットワークなどのサイバー空間から証拠の解析や保全を行います。
不正アクセスやデータ改ざんなどのサイバー攻撃、そして故意・過失両方を含む情報漏洩は、IT技術の発展とともに増加しています。デジタルフォレンジックは、現代において急速に需要の高まっている法科学としてとらえることができるでしょう。
デジタルフォレンジック
デジタルフォレンジックにはどのような分野があり、そしてどのような手法で実施されているのでしょうか。また、セキュリティとはどのような関係性があるのか、その実態について解説します。
デジタルフォレンジックの分類
デジタルフォレンジックでは、さまざまな機器から証拠となる情報の解析や保全を行っていきます。デジタルフォレンジックを細分化すると、以下の3つに分類することができます。
- コンピュータ・フォレンジック
- モバイルデバイス・フォレンジック
- ネットワーク・フォレンジック
コンピュータ・フォレンジックでは、コンピュータ内に残されたデータを解析したり、すでに削除されているデータを復元したりすることで情報を引き出します。データベース・フォレンジックという分類もありますが、データベースは大まかに分けるとコンピュータ・フォレンジックに含まれます。また、データベース・フォレンジックは、データベースへの改ざんや破損などがあった際にその事実や原因、経緯を解析する技術のことです。
モバイルデバイス・フォレンジックは、スマートフォンをはじめとしたモバイル端末を対象として実施される、デジタルフォレンジックです。通話履歴やチャット履歴、アクセスログなどを解析し、立証につなげます。
ネットワーク・フォレンジックは、ネットワーク機器を解析するデジタルフォレンジックです。例えば不正アクセスがあった場合に、ネットワーク機器を調査することで、対象のネットワークに侵入してきた端末を特定することにつなげます。
デジタルフォレンジックの実践
では、デジタルフォレンジックはどのような流れで実践されていくのでしょうか。ポイントとなるのは以下の3つです。
- 証拠の保全
- 証拠の復元
- 証拠の解析
調査の対象となる端末からデータが削除、改ざんされたりしないよう、デジタルフォレンジックを実施する際には、まず証拠の保全が行われます。そのうえで、すでに削除されたり破損したりしているデータがあれば、専門技術をもって対象のデータを復元します。
また、証拠に繋がる重要データは暗号化されていることが多いため、デジタルフォレンジックの際には、専用のツールや技術による解析も必要となります。
デジタルフォレンジックとセキュリティ
デジタルフォレンジックとセキュリティには、どのような関係性があるのでしょうか。
デジタルフォレンジック自体は、サイバー攻撃や情報漏洩に対して、非常に強力な抑止力となります。デジタルフォレンジックを実施できる体制を整備しておけば、証拠の特定がスムーズになり、攻撃者にとっては特定される恐れやリスクが高まります。整備された体制をアピールすることで、抑止力にもつながるのです。
セキュリティ強化の観点から見ても、デジタルフォレンジックは重要な役割を果たします。万が一サイバー攻撃の被害にあった場合でも、早めに原因の究明ができれば、再発防止に向けた取り組みに生かすことができます。
まとめ
デジタルフォレンジックは、電子的領域の法科学にあたります。活用すれば、デジタル機器からデータを解析し、サイバー犯罪などの証拠を見つけることが可能です。情報社会となった現代においてデジタルフォレンジックの重要性は非常に高まっており、セキュリティのさらなる強化を図る際にもデジタルフォレンジックは大きな役割を果たすでしょう。
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