デジタルフォレンジックとは? その目的から実現までの流れ

 2023.09.20  2024.02.15

情報技術が発展した現代では、サイバー犯罪や情報漏洩などの事故・事件の増加が大きな問題となっています。デジタルが関わった刑事事件や訴訟は珍しくなく、それにあわせてデジタル上にある証拠の保全・解析を行う「デジタルフォレンジック」の重要性も高まっています。

そこで本稿では、デジタルフォレンジックの意味について解説した上で、その目的についても説明します。

デジタルフォレンジック(ディジタルフォレンジックス)とは

まずは、デジタルフォレンジック(ディジタルフォレンジックス)について、その意味や概要について整理していきましょう。IT技術が発展した現代では、デジタルフォレンジックはどのような重要性を持つのでしょうか。

フォレンジックとは

「フォレンジック」という言葉はあまり耳にする機会がないため、どのような意味がある言葉なのか想像できない人も多いのではないでしょうか。

そもそもフォレンジックとは、「法廷」に関することを示す言葉です。そして一般的には、フォレンジックというと、「法科学(フォレンジック・サイエンス、フォレンジックス)」を指して使われることが多くなっています。

デジタル世界におけるフォレンジック

フォレンジック・サイエンス、フォレンジックスの概念をデジタル世界に適用したものを、「デジタルフォレンジック」と呼びます。

近年、情報技術の発展に伴い、不正アクセスやデータ改ざん、遠隔操作などのサイバー犯罪の数も増加しています。そのため、現代社会ではサイバー空間においても証拠の保全と分析を行っていく考え方が浸透してきています。このデジタル世界における証拠の保全と分析が、デジタルフォレンジックです。

大量のデータ送信や不正アクセスなどの攻撃を受けた際には、その痕跡や破損したデータの復元を試みるなどの対処から、原因や証拠を究明していきます。

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デジタルフォレンジックの目的

次に、デジタルフォレンジックの目的について解説します。デジタルフォレンジックの目的について理解を深め、その成果を知ることは、サイバー攻撃への備えに繋がります。 

被害発生時の原因究明

マルウェアに感染させる行為や不正アクセスなどのサイバー攻撃があった際には、その被害を確認した上で、デジタルフォレンジックを用いて原因の究明へ繋げていきます。

サイバー攻撃の種類は何にあたるか、どのような場所に脆弱性があったのか、マルウェアに感染させられた経緯・経路は何かなどをデジタルフォレンジックにより調査していきます。

これらの原因究明は、再発防止策を立てることにも役立つほか、場合によっては、法的措置へ行動を移すことも可能となります。

訴訟への備え

デジタルフォレンジックによって原因や経緯が明確になれば、責任の所在はどこにあるのかが徐々に明らかになっていきます。証拠の保全と分析だけでなく、デジタルフォレンジックは責任の所在を示す上でも役立ちます。

セキュリティに関わる事故が起こり、自社が責任を問われることになった際には、訴訟に向けて準備が必要となります。その際にデジタルフォレンジックによって経緯を詳しく調べることができれば、何(誰)の過失によるインシデントなのかがわかり、訴訟に向けて備えることができます。

不正行為の予防

デジタルフォレンジックは、不正行為の予防にも繋がります。あらかじめ、デジタルフォレンジックによる被害調査や原因究明が行えるという環境・人員・依頼先などの体制を整備しておけば、攻撃者は標的として狙い難くなります。

攻撃者にしてみれば、足がつくことは当然避けて通りたいものでしょう。組織内部の人間や元従業員などが名簿業者に顧客データを売り、情報漏洩の事実が発覚することはよくあるケースです。しかしデジタルフォレンジックによって証拠の分析が素早く行われることを本人が認識していれば、不正行為を未然に防げる可能性があります。

デジタルフォレンジックによる証拠の保全が可能になることで、データ改ざん、遠隔操作などの不正行為を予防することにも繋がります。

デジタルフォレンジックの実態

ここからは、デジタルフォレンジックの実態について整理していきましょう。具体的な手法や調査の流れとして、デジタルフォレンジックはどのように行われていくのか、詳細を解説します。

証拠の収集と保全

デジタルフォレンジックは、分析の対象となるコンピュータ内にあるデータを保全するところから、原因究明などの調査が始まります。

証拠保全の際にポイントとなるのは、被害が発生したときの状態をしっかりと保っておくことです。被害が確認されたあとにデータの変更などがあると、証拠の収集に支障をきたします。すべてのログから証拠の収集と保全を行うため、途中でデータの内容が改ざんされたりしないよう徹底した管理が必要です。

ちなみにデジタルフォレンジックの対象となるのは、サーバーやパソコンだけではありません。被害や攻撃の内容に応じて、ネットワーク機器やモバイル端末なども対象となります。

証拠の復元と解析

サイバー攻撃や情報漏洩などがあった際には、データを保全していても、すでに証拠となるデータが削除されていたり、暗号化されていたりすることが多くなっています。そのため、デジタルフォレンジックを実施する際には、削除されたデータの復元を試みたり、暗号化データを解読したりして証拠を探していきます。

データを解析する際には、どのような経緯でデバイスの操作があったのか、専用のツールを使用してチェックします。解析ツールがあれば、通常ではわからない操作のログを確認することができ、証拠の発見に繋がります。

レポートの作成と活用

デジタルフォレンジックが実施された際には、データの復元や解析によって得られた情報をまとめたレポートが作成されます。サイバー攻撃や故意的な情報漏洩があった場合、レポートは証拠資料として大きな意味を持ちます。

レポートは法廷での証拠としての活用だけでなく、そのほかの折衝があった際にも事実を証明するための資料になりますし、レポート内容をもとに社内のセキュリティ対策強化に繋げていくこともできます。

まとめ

いかがでしょうか。デジタルフォレンジックは、不正アクセスや情報漏洩などの事故・事件があった際に、電子機器に残るデータから証拠を保全・分析していくことを指します。デジタルフォレンジックは、IT技術の発展とともにサイバー攻撃や情報漏洩の件数が増している現代において、必要性の高い技術・手法といえます。

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